時を越える。失われた記憶を味方につけたいときに、この曲を。
これまで歩んできた道が、ほんの数分で語れてしまえば、どこか軽々しく思えるときもありますよね。
語りきれない一つひとつの瞬間に、重みを感じていいんです。
人の記憶は微々たるもの。その何倍もの歴史が、あなたにはあるのですよ。
幾千年の木
風のない晴天の下
いくつもの光の輪が降ってくる
わずかな季節に作るグラデーション
光を地上へ通してしまうほどの
繊細な色味の花をつけ
飛び跳ねて遊ぶ木霊たちを
目を細めて見つめている
信頼する誰かに身を任せ
何本もの杖を受け入れたキミは
生き続けることを選んでいた
はるか昔に出会った記憶は
すっかり消されているというのに
懐かしい息遣いを聞き分け
まっすぐに視線を向けてくれた
また会えたね。
涙を枯らした別れは
一時と言えるほど短くはなかった
同じシーンが繰り返されるのか
今はまだ
わからない
♠ composer’s note
岐阜県本巣市の根尾谷に、国指定天然記念物の樹齢1500余年という淡墨桜がある。
存在は随分前から知っていたのに、そこへ赴く気持ちになれなかったのは、単純に花見をする感覚ではちょっと違う気がしていたから。拝みにいく、わざわざ特別な存在に会いに行く、そんな重厚感があったからだ。
自分の状態を整えていかないと、なんだか失礼のような気がした。
それはまるで、遠い昔に会ったような、長く待ちわびた再会のような大切な瞬間。
生き続けてくれたこと、そして、守り続けてきた人々。感慨深いものがあった。
圧倒的な威厳を放ちながらも、繊細で深い優しさを持つ大木のピアノソロ。そこに宿っている目に見えない様々なものたちの喜びが音を鳴らす。
待つ、受け入れる、守りぬく。
この世界を生き抜く生命の時の中に、この人生を重ねる瞬間が持てたことに、感謝したい。
ホッとできる、音楽を♪
曲名:幾千年の木 Usuzumi-Zakura
発売日:2019.09
曲の長さ:7’07”
主な楽器:ピアノソロ
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