背高のっぽで幹はスリム 威圧感なく柔らかい気を放つ 柳の樹 暖簾をくぐるように 「ごめんください」と入れてもらう 長く垂れ下がった ドーム型の枝葉に囲まれてみれば…
北の果ての田舎町は 青々とした木々 こじんまりとした家 虫と鳥のさえずり 油絵のように じっとそこに居座っている 戻ってくると 知っていただろうか また帰ってくると 待っていただろうか…
夏が終わりを告げるように キミの心は揺れていた そっと吐き出す小さな息が モコモコの雲を作っていく 空の隙間に現れた イナズマから逃れられない無力さが…
ボクは夢中でシャッターを切った。キミの美しさに見惚れている間もなく、一枚、また一枚と。 時にはうっすらピンクの輪を作り、時にはウサギの餅つき写し出し、キミはどんなモデルよりも美しかった…
ほんの十日前 まだら模様の鯉泳ぐ小川の上に 絡み合った小枝がアーチをつくり 冬の風が流れていた キミのつぼみが膨らむことが ボクの喜びとなった キミは美しかった…
冬の北国、開かずの窓 透き通った分厚い板が 窓をカッチリと固め 落ちた雫と結びつく あちら側からこちら側 閉塞、それとも守護? 寒々しいから温かい…
畑の脇にある、一本の柿の木 だいだい色のぷっくりとしたお尻を下げ 細い枝へつかまっている 見慣れた土の景色から天を仰ぐと 空と柿…
そっと縁側に腰を下ろすと、見慣れた庭が姿を消す まるで、足を踏み入れてはいけないような 「涼」という名の空間が、そこにある 一筋の風がさらりと頬をなで…