十年くらい前からか、お気に入りの木に会いに行くようになった。
鶴舞公園の柳の木。
細長い葉をたくさん付けた枝が垂れ下がった中へ、まるで暖簾を潜るように、
「こんにちは!」
って入れてもらう。
背の高さのわりにすらりとした幹にそっと手のひらを当て、
「ありがとう。元気だったかい?」
って話しかける。
枝の隙間からちょうど噴水が見えて、とってもいい景色なんだ。
外界との堺に見えないバリアが張られていて、ドーム型のシェルターの中にいるようで、守られている安心感に包まれる。
公園の中を吹き抜ける風が、直接当たらないように、枝葉がフィルターをかけて、きめ細かい優しいそよ風のような風だけ中に送り込んでくれる。
肌に心地よい風を感じるのと同じタイミングで、枝葉が一斉にサラサラ揺れる。
それはまるでダンスを踊っているようで、再会を歓迎してくれてる気がするのだ。
どんなに煮詰まっていても、この木に会いに来れば、私を取り戻すことができる。
自分のプラグを差し込むように、エネルギーチャージされていく。
大好きなこの木の音楽を創りたいと、ずっと思っていたけど、なかなか気に入ったのができない。
大切過ぎて、愛おし過ぎて、緊張してるのだ。
だから、木に直接教えてもらおうと、また会いに行った。
「あなたの音楽を聴かせて欲しいの。」
そうやって素直にお願いして、音を降ろしてもらう。
それが、精霊たちと繋がる美しい瞬間なのだ。